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浅き夢見し
諸行無常…むなしいものだなあ…関口君のところにでもいくか
陰影の翳る
逢う魔ヶ刻…
君は、妖魔を率いて、そこの葬式に出るのだろう。
老人が蘇る儀式なのだ…生まれた老人は、次第に若返っていき、やがて赤子になって、胎児になって、死んでゆく…
此処は、聖と邪がさかさまになった世界…泡世の道。
夢の中の迷宮。
片方の靴をなくして、歩く道すがらひもじくなってきたら、
目のきつい、こわい顔をした商売人の男が、鬼の腕を売っている。
食え、という。赤黒い、その腕、食えたものじゃない。
そういうものが、病院の傍の、稲荷神社の隅のほうで、謎の露天商によって売られていた
摩訶不思議な夕暮れ、空が堕ちて、夕日がいつまでも、刻を止める。
君は合わせ鏡の前で逆さ文字を書き、僕は天井裏で君を抱きしめ続けられる。
その中なら、永遠だね、関口君――――
過去は、こちらが見ているとき、こちらを見ている。いつだって、鏡あわせの呪文
このところ、故郷の夢を見る。
夏の暑い日、線香の匂いと念仏の声に誘われて入った小径で、
自宅に墓を持っている家を発見。
木々に覆われ鬱蒼とした昏い家。
墓の前で、真っ赤な着物を着た老婆が、必死に手を合わせ念仏を唱えている。
それが、自分の祖母なのだ。そんな夢。
明け方に見る、竹藪のなかの水晶の、夢かな。
今朝も夢うつつ。口に含んだ水晶が、さもありなん、と、念仏を唱える夢。
仄かな、西瓜の味。
ひさしおの浅き夢みし明けの朝かな、宵にまで見るは、おまへの顔かな。
あさきゆめみし
櫻の木の下の、蔵の隠し扉の奥に、秘密の巻物を隠しておいたんだ。
中には綺麗な昔の絵が載っている。
でも、この秘密の巻物を見ると、君は呪われて、鬼になってしまうよ。
とても、魔魅の力が強いから。蔵の呪いの巻物。
真言を、逆さの呪文にして造語を含めて唱えていたら、
海がせりあがってきて、溺れそうになった。
白昼夢。
昔の記憶、過去の呪い。
今年も雨と紫陽花が、洗い流してくれます。コチ、コチと、鳴る時計に過去の思い出が蘇ります。
懐かしい故郷が瞼の裏に移っては、燐光のように、輝きます、
それは、夜のランプのように、あなたのように、帰るべき街道沿いの道へと続きます。
はざまの闇に、うっすらと、あなたの姿が垣間見えます。
あなたは、けして私に押しつけがましいことを言いませんでしたね。
時の流れは、早いものですが、あなたの背中は、いつも懐かしくて、故郷に帰るようです。
夢のまにまに
どうして、思い出は、いつも、切なく胸を打つんだろう。
この胸に、鼓動がします。
過去の記憶が脈を打って、遠い昔へ帰ります、時折、電話をかけてください。
郷愁の闇は、居心地のいいゆらゆらと揺れる、木漏れ日の様に、
赤い舌をちろちろして、闇へ誘うのだろう。
懐かしい道は、ずっと過去に続いている。
光の洪水と、強い陰翳の濃い闇と。闇と、病み。
あるいは、近しいのかもしれない。いにしえの過去に…。
ああ、あなたも、蘇ります。
過去の、古き、物語の、恐ろしい説話の中に。
おかしい夢のなかのように、あなたの笑顔が、入道雲の向こうに、消えた。
懐かしさは、瞼の裏側で、ひそかに、足をひそめて、線香花火のように燃えている。
夢の幕間のように、おどけてパントマイムを踊るあなたの着物の裾に、
過去がぶらさがっている。記憶を辿る道へ…
懐かしさとは、手のひらの温かさのようだ。
真夏の太陽の日差しを浴びて、木漏れ日がキラキラと輝いて、
遠い日傘の彼女を思い出す。
木陰の闇は、鬼のような目をした彼を思い出させる。
赤い鬼の面が、路地に転がっている。
ここは、不思議な世界。
雨の闇と、畳に移る日差しの陰翳礼賛。鬱屈とした雨の中で、人は過去へ想いを馳せる。
思い出は、悠久の時を刻み、壁掛けの古時計だけが永遠を知る。
紫陽花の雫が、煌めく太陽に照らされ始めると、人はなぜ闇を求めるのだろうと気がつく。
さあ、恐ろしい日本の紙芝居が始まるよ。
夕陽の照らす、屋敷にたたずんで、恐ろしい鬼を想う。
死者を弔い、闇へ帰す手は、血で汚れている、
けれど、なぜだか、優しい日差しに照らされている、安らい花を思い出す。
人の行いは、功徳と業でできている。
気を付けたまえ―――、後ろを。足を捕られるよ。
一寸先は、闇。
風鈴が夏の訪れを告げると、入道雲がもくもくと立ち昇る。
部屋の隅に蹲っていた赤い目をした鬼が、
お前は偶然にも生きたなと告げて、ふっと消えた。
過去を告げる黒電話がジリリリ…と鳴って、
あるはずのない土地に旅に行けと告げる。
片腕を亡くした少女が、街角に現れて、嗤う。
風鈴の音に紛れて雨が俄かに強くなる。
過去とは永遠の思い出だ。
壊れていたネジ巻き時計を回して、あなたを想う。
光が、過去を照らしたとき、闇もまた、強くなるだろう。
その闇に、潰されないよう生きていくのが、本当の強さではないか。
雨上がり、揺らめく陽炎に魂の去来を知る
家の裏の蔵近くの川に、人魚が泳ぐ。
春の雲間から光が差し込み、木漏れ日のなか、綺羅綺羅とした流水の中、泳ぐ。
鱗が碧く光を反射する。
サイダーを差し出す。
朝焼けに、瓶の底までも綺羅綺羅と、それもまた、闇の内。
路地裏の朝焼けを見ている。
路地裏は 謎 ノスタルジーという、懐古の秘密が 隠れている
頭をもたげて、佇んでいる。
思えば、遠くまで来たものです。
足元からすでに消えかかっている。
あなたは、とうに、この世の者ではない。
記憶のかけらを持って、旅立つ秘密の影。
夢うつつ。記憶の底の昏い闇に、置き去りにした禁断の夏。
刹那の過ちに蝉がしゃわしゃわと、念仏を唱えて叱る。
縁日の鬼の面を見ていたら、母を殺す夢を見てしまったことは、内緒にしておいてください。
神様仏様。
通りに落ちている凌霄花の花が、嗤うように綺麗に咲いている。
昨日の夢を見る 過去は、色褪せたフィルムのなかに閉じ込められている。
西日射す蔵の中で、宝石の砕いた結晶みたいな埃の中、どこか他人みたいに微笑んでいる
こんにちは。
あなたは、生きているみたいにひょっと、元気な顔を見せるんじゃないか
ああ、今年も夏が近いです
昨日の夢を見る。
昔の思い出。
陽の差す座敷の昏がりで笑うあなたはあやしくてどこか懐かしい。
しゃぼんの匂いと、小さな玩具。
外に出たら止まれの標識の前で、履物をそろえて脱ぐ遊び。
駆けていくあなたは綺麗な着物を着ていましたね。
禁断で秘密の呪文、通りゃんせを唄いながら
宿場町の懐かしい迷宮に、迷い込んだ。
刻は、過去を刻み、ゆっくりと、あの人が甦る。
鎮魂歌を唄って亡くなったはずの、懐かしい人。
こんな所を彷徨っていたのですね。
鬼となったか、神となったか。
ふと、通りがかった家から、線香の匂いがします。夏は、供養の季節。
懐かしい宿場町の迷宮に迷い込んだ。
そこは、果ての見えない迷路。
電柱に逆さ文字を書くと、黒電話が鳴って鬼が湧く。
怖い怖いと泣いていると、鬼やらいがやってきて、密かに退治してくれる。
貰った風車は、良く廻るかい?
彼らの悲しい宿世を知ったら、君は泣いてしまうだろう
夏の町は、迷宮の入り口。
小径に迷路がどこまでも続いている。
たしかに、抜けたと思っても、また、迷い込んでいる。
ここはどこですか?
迷宮は、懐かしい風が吹いている、不思議な懐古の世界。
おや、あなたは昔お世話になった祖母。亡くなった人がよみがえる。
夏のまぼろし。
宿場町。風の操り人。
貴方は通り道を、消えたり現れたり、不思議な歩き方をして、恐ろしい鬼と闘う。
彷徨い人。街角に現れる鬼がこわいか
足音もなく、翻った着物の袖の裾に、小さな風の神。
つむじ風が音もなく舞い上がって、風鈴がリンと鳴る。黒い影があちこち。
あなたが還るころ、私も還ります。
ああ、ここは夏。
懐かしい、郷愁的な風の通り道
ここは、どこだらう。
影だらけの、闇のダンス、宿場町の都。
迷宮。
風の通り道は、忘れ去られた面影を、ふいに思い出させる。
あなたは、生きていますか?
死者が、街角からふいに顔をみせた。
嗚呼、自分も混ざってゆく。
夢のまにまに。
浅き夢見し。
夏は、遠いおぼろ。
人が懐かしさの檻に入ると、郷愁が、ひたひたと足を忍ばせてやってくるだろう。
古い写真の中のような、過去の記憶が黒い影となって、不思議なモノとコトを起こす、夏。
鼓動が早くなって、やがて来る夏の夜の宴を想って眩暈がする。
ゆらゆらと木陰が揺れる木漏れ日。
懐かしい景色が思い出と共に、遥かな入道雲の高みへと消えてゆく。
戸棚の中の抜けた歯。
水槽の中の金魚の死骸、
そんなものまでゆらゆらと光の中。
懐かしさに血が脈打ち鼓動がドクドクと鳴る。
夏祭りの太鼓、遠い海。潮騒。
夏は魂が蘇る季節。
風鈴の音に紛れて雨が俄かに強くなる。
過去とは永遠の思い出だ。
壊れていたネジ巻き時計を回して、あなたを想う。
光が、過去を照らしたとき、闇もまた、強くなるだろう。
その闇に、潰されないよう生きていくのが、本当の強さではないか。
雨上がり、揺らめく陽炎に魂の去来を知る
風鈴が夏の訪れを告げると、入道雲がもくもくと立ち昇る。
部屋の隅に蹲っていた赤い目をした鬼が、
お前は偶然にも生きたなと告げて、ふっと消えた。
過去を告げる黒電話がジリリリ…と鳴って、あるはずのない土地に旅に行けと告げる。
片腕を亡くした少女が、街角に現れて、嗤う。
祭りの夜。金魚は水の中で、繰り返し泡あぶくを吐いている。
懐かしい生き物は、過去を見ているのだ。
逆さの世界。未来へ進むものは過去へ、老人は若人へ、繰り返し、時計は逆さに回る。
その中で、人は、自分の運命を知るだろう。
非情の世界…それが、泡世の世界。
夕暮れ小道。カーテンのひらめいている障子の家に、病弱なあの子の影が消えてゆく。
逢魔が時、刻の止まっているこの町では、座敷童が、シャボン玉をくゆらせている頃。
燕たちが、明日の雨を想って低く飛ぶ。
お地蔵さんの後ろで、閻魔が笑って、愚かな人間たちの舌を抜いている。
懐かしい田舎街の、奥地。
夕方のチャイムが、鳴ります。
病弱なあの子は、帰って眠った頃でしょうか。
布団の横の夕日に煌めく毬。
あなたの影法師が、黄昏時を、妖しく踊り出す頃です。
道端の地蔵の裏側で、小鬼が、躍り狂う。
懐かしさの万華鏡は、あなたのすぐ隣に。
遠き日に忘れてきた黄色い麦わら帽子。
雨の中で人を待つ。
さ迷い歩く迷宮の終わりのない道。
あなたは誰ですか?
街角に夏を告げる雨、彷徨う人はやがて自分をも忘れて、形のない想いはあてどなく。
息をするたびに、すべてを忘れて過去へ還るのです。
懐かしい人には会えましたか?
夏が来る。懐かしい道、夢の道。
いつか来た道、知らぬ道。
見知らぬ街で、君は、理由も分からぬ理由にて、姿をくらますだろう。
目眩の末の、脳震盪。
目覚めた先の、脆弱者の病院。
懐古の街角。
風の通り道。
古い木の匂いに誘われて。ふつり────。
息も、悩みも、途絶える。
宿場町に風が吹いて、いにしえの呪文が甦る。
街道沿いは、人の記憶だ。
想い出に風が吹いて、過去へと戻るだろう。
そうして、人は大人から赤ん坊へ、逆さに、刻が廻っているのだ。
風が吹けば、西へ東へ、遠い記憶、彼方の魔法。
(懐古の旅。詩歌題:夢幻抒情詩)
昭和の香りは、燻(くすぶ)るマッチの香り…
戦争で、焼けた焦土と、死体の匂い…
八月一五日の、黙とうの時の、あの神聖な沈黙と、ゴゴ…と、今でも空をよぎる、B29の戦闘機の音。
電話をかける。あの日へ。
謎の番号、亡くなった人への秘密の言伝。
懐かしい街道は、夢の通い路
今日も昨日の夢をみている
明日は過去、未来は想い出
闇の深いところに、過去は宿る
今日も古ぼけた街角で、
昔の人を待つ
夏の木漏れ日や、かき氷の、綺羅綺羅は、
寄木細工の底にこびりついていて、
かたくなにしまい込んでいても、
蛇のように、私の心を、鈍く、ほろ苦く、
いつまでも、いつまでも、年中、恋の様に、
苦しめ続けるのだ。(光の経文)
夏の訪れは、過去への旅から始まる。
街角の子供。夕陽の入道雲。古い郵便ポスト。
風に鳴る風鈴。宿場町の雛人形。突然の夕立。
泣きわめく蝉時雨。あごから流れる汗。目から流れる涙。
切なくて、わめきたくなる。これはなんだろう。
知らない木箱の鍵。中には干からびた夢の過去。
夢の幕間に不吉な夢を見た気がする。
お坊さんの幽霊が部屋の片隅に立って六文を寄越せと要求してくる。
ここは不思議な泡世の世界。
何が起きても可笑しくない。
はるかないらかを見上げて遥かな入道雲が、
妙に切なくてシャボン玉を庭でしていたら
小さな閻魔が、石影で嗤っていた。
蟻の道しるべは、蟻地獄へと続いている。
どの道選んでも、地獄の竈が待っている気がする。
蝉の鳴き声、夏の読経。雲水様が、列をなして、南へ進んでいく。
常世の海へ。極楽への道しるべ。
百円を托鉢して、手を合わせる。
もうすぐ夏祭り。死人に口なし、されこうべ。線香の匂い。
とおい、呼ぶ声、山の声。山彦に返事を返してはいけないよ。
山の神様に連れていかれるから。
街角で、人が消えてゆく。
迷路に巻き込まれて、自分を見失い、還る道を忘れたか。
入道雲に向かって歩けばよい。そんなのは嘘だ。
忘れたはずの夏が、夜が、白昼夢が、甦る。
宿場町の片隅の地蔵の影で赤い目の小鬼が踊っている。
家の中の影に青い炎を宿した蝶が踊り、ひらひらと、過去へと誘っている。
魂の去来。夏のひと時。逆さに廻る時計と回り灯篭。
凡ては懐かしさの幽玄に巻き込まれて、私は過去を忘れて遠くに旅立つ。
夏の迷路。夢のまにまに。
昔来た道、風の町。街角で閻魔が嗤って、人の舌を抜いている。
万象のものは、人知の及ばざるもので出来ている。
自分の思い通りにするなんておこがましい…
僧侶の叱る声が黒電話の向こうでしてきて、眩暈がする。
そうさ、思い通りになんてできやしない。
みんみんと蝉が鳴く。
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